現在作成中です。 既に書いている内容も大幅に変わる可能性が高いです。 as of 2010-04-28 (222)



担当教員

陰山 聡

演習日

  • 2010.05.06
  • 2010.05.13

概要と達成目標

  1. 概要
    1. why f? (なぜFortran95言語か)
    2. f && c (Fotran95とCの同じところ)
    3. [演習]Hello, world. コンパイルと実行
    4. diff f c (Fotran95とCの違うところ)
    5. wonderful f (Fotran95の素晴らしいところ)
    6. practical f (Fotran95によるコーディングの実際)
  2. 目標
    1. この「計算科学演習I」で扱うFotranソースコードが自由に読めること。
    2. 2次元拡散方程式を解くコードをFotran95言語の特性を活かして書けるようになること。

はじめに

エディタとコンパイラ

  • Emacsのmajorモードをf90に設定すると便利(f95モードは用意されていない)
    • ミニバッファでf90-modeと打つ (Esc-x f90-mode)
    • 構文の開始と終了ペアリング入力が簡単。tabキー
    • ^Jで整形改行
  • scalar上でのコンパイルコマンドは pgf95 またはpgf90

Fortran90/95の歴史

  • FORTRAN(全部大文字の)という言語は存在しない。
    • Fortran90Fortran95という言語ならある。
  • FORTRAN66。
    • 1966年に標準化。
  • FORTRAN77
    • 1977年に標準化。
    • if/then/else
    • 広まった
  • Fortran90
    • 1991年に標準化。
    • 大幅な改訂
  • Fortran95
    • F90からのマイナーバージョンアップ

Fortran90はFORTRAN77とは大きく違う。違う言語と考えるべき。

| f95 - f90 | << | f90 - f77 |

why Fortran90/95?

正しい理由

  1. 計算速度が速い
    • スーパーコンピュータは速さが命
    • C/C++でもFortranと同じくらい速いコードは書けるが、遅いコードも書けてしまう。
    • 言語としての自由度の違い。自由度が高いとコンパイラが困る。最適化ができなくなる。
  2. 便利
    • 道具(言語)は目的にあったものを
    • 数学的計算にはFortran90/Fotran95が適している
      • For-mula Tran-slator
    • 数値計算ライブラリの抱負な蓄積。Legacyなコード。財産。

間違った理由

『新しい言語を勉強するのは面倒だ。 FORTRAN77の何の不足もない。これでxx年やってきた。』

・・・Legacyな人間。時代に2010-1977=33年遅れている。

Fortran90/95に対する偏見

以下全てFORTRAN66/77と誤解している。

  • 変数名は6文字までなんでしょう?・・・そんなことはありません。
  • ソースコードは全部大文字なんでしょう?・・・そんなことはありません。
  • ソースコードは固定形式(7列目から72列目まで)なんでしょう?・・・そんなことはありません。
  • 構造体がないんでしょう?・・・あります。普通に使います。
  • ポインタがないんでしょう?・・・あります。あまり使う必要はありませんが。
  • 再帰呼び出しができなんでしょう?・・・できます。あまり使う機会はありませんが。
  • 関数とデータをまとめてひとかたまりにする(クラス化する)ことなんてできないんでしょう?・・・できます。普通にやっています。
  • データ/関数の隠蔽(カプセル化)ができないんでしょう?・・・できます。いつもしています。
  • 演算子を自分で定義することができなんでしょう?・・・できます。いつもしています。
  • 関数や演算子の多重定義ができなんでしょう?・・・できます。いつもしています。

Fortran90/95は現代のプログラミング言語である。

  • スーパーコンピュータ向けの言語としては最先端
  • 特に並列計算機には
  • 数値演算や計算機シミュレーションには最適な言語

まだ納得できないない?では例を一つ

部屋の中の温度場の分布から平均気温を求めよう。

温度場を3次元float配列 f(nx,ny,nz)で表す。3つの整数nx, ny, nzは不定。

平均気温=全ての格子点(i,j,k)上でのfの値を足して格子点の総数で割る

【演習】

任意サイズの3次元単精度実数(浮動小数点数)配列を受け取り、 その平均値を返す関数をC言語(またはC++言語)で作れ。

  • scalar上でのCコンパイラ=cc, gcc

Fortran90/95ではこう書ける。

わずか4行。

 real function mean_value(f)
   real, dimension(:,:,:) :: f
   mean_value = sum(f) / (size(f,1)*size(f,2)*size(f,3))
 end function mean_value

数式の表現が簡単な例(複素数)

$e^{i\pi} = -1$ つまり

e_i_pi.jpg

をFortran95で書くと、

complex :: i = (0.0,1.0)
real :: pi = 3.141593
print *,' exp(i*pi) = ', exp(i*pi)

例(行列の計算)

行列のかけ算はFortran90/95ではmatmulという組み込み関数を使う。 行列の転置をとる組み込み関数transposeも用意されている。 したがって、行列A(例えば10行10列の2次元配列)の転置と別の行列Bの積を計算しそれを行列Cとする計算、つまり

matmul_a_transpose_b.jpg

をFortran90/95で書くと、

 real, dimension(10,10) :: A, B, C
 C = matmul(transpose(A),B)

と一行で書ける。

例(級数)

級数

series_one_forth.jpg

の最初の1000項の和を求めるプログラムも、式をそのまま書けばいい。まさにFormula Translation。

integer, parameter :: nterms = 1000
real, dimension(nterms) :: x, y, z
integer :: i
do i = 1 , nterms
   x(i) = 1.0 / i
   y(i) = 1.0 / (i+1)
   z(i) = 1.0 / (i+2)
end do
print *,'ans = ', sum(x*y*z)

例(3次元ベクトル場のエネルギー)

空間中に分布する磁場(3成分のベクトル場)

Bx(100,100,100),  By(100,100,100),  Bz(100,100,100)

の全磁気エネルギーを計算して出力するには、

print *,' energy = ', sum(Bx**2+By**2+Bz**2)/2

と一行(定義式そのもの)を書けば良い。

diff f && c : C言語との比較によるFortran90/95入門

定番 hello, worldプログラム

C言語

#include <stdio.h>
main () {
  printf("hello, world.\n");
}

Fortran90/95

program hello_world
  print *, "hello, world."
end program hello_world

【演習】

  1. 計算機「scalar」 で、上のFortran90/95プログラムをエディタで入力し、 ファイル名hello_world.f95として保存せよ。
  2. ls -l コマンドでファイルを確認せよ。
  3. hello_world.f95 をコンパイルせよ。
    • pgf95 hello_world.f95
  • Fortran90/95では標準入出力は組み込まれている(ヘッダファイルをインクルードする必要はない)
  • Fortran90/95では print *で標準出力へ。
  • 行末にセミコロン不要。
  • 文字列はダブルクォーテーションマーク(")で囲む。(C言語と同じ)
  • シングルクウォーテーションマーク(')でも同じ意味。(これはC言語と違う)

大文字・小文字

  • Fortran90/95のソースコードではアルファベットの大文字と小文字は区別しない。
    • voltage と Voltage と VOLTAGE は同じ
    • 文字列変数の中では区別される。

予約語

Fortran90/95には予約語が存在しない。 それが変数名かどうかコンパイラが賢く判断してくれる。

if (end==else) if=0

は文法的に問題ない。

コメント行の書き方

C言語

 /* この間がコメント */

Fortran90/95

  ! 一行の中でこの文字以降がコメント( C++やJAVAの//と同じ)

型名

C (C99)Fortran90/95補註
文字charcharacter
文字列char[n+1]character(len=n)nは文字長
整数intintegerinteger(kind=4)でも可
実数floatrealreal(kind=4)でも可
倍精度実数doublereal(kind=8)kindの整数はシステム依存
「長い」整数longinteger(kind=8でも可)kindの整数はシステム依存
bool_Boollogical値は .true. または .false.
複素数_Complexcomplex
構造体structtype詳しくは後述

定数

C言語

#define NX 100

Fortran90/95

integer, parameter :: NX = 100

配列

1次元配列

C言語

int array01[NX];

Fortran90/95

integer, dimension(NX) :: array01

2次元配列

C言語

int array02[NY][NX];

Fortran90/95

integer, dimension(NX,NY) :: array02

3次元配列

C言語

int array03[NZ][NY][NX];

Fortran90/95

integer, dimension(NX,NY,NZ) :: array03